思いついたままに書いた小説を書きとめておく場所。
『さくらそう』は、私が思いついたままに書いた小説の置き場です。
なので更新は不定期です。
本当に思いついたまま書くだけなので、面白いかどうかは分かりません。
読んでみて、もし何か思うところがあれば気軽にコメントを下さい。
こちらからコメントを返せるかは分かりませんが、大切に読ませていただきます。
(文章力が無いのは仕様なのでどうぞ見て見ぬふりを決め込んでください)
↓本性剥き出しな呟きです。
http://twitter.com/LiMY_ss
↓PBW関連はこちら。
『シルバーレイン』『エンドブレイカー!』『螺旋特急ロストレイル』など。
http://yui778shino.blog.shinobi.jp/
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本当に思いついたまま書くだけなので、面白いかどうかは分かりません。
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あたしね、死ぬのが怖かったの。
死んだらあたしはどうなるのかなって。あたしが知ってる限りじゃ、前世の記憶を持ってる人はいないのね。だから多分、死んだらもう生き返れないよね。生き返っても記憶が無いなら、生き返れないのと同じでしょ。それに、どこに行くかも分かんない。楽しいとこならいいけど、怖いとこだったら嫌だもん。誰もいないとこで一人ぼっちにされたりしたら悲しくてまた死んじゃう。もしかしたら、どこにも行かないのかもしれない。あたしはどこにも無くなっちゃうの。そんなのやだよね。
だから死にたくないって、そう思ってたのね。でもあたしの病気は治らない。明日にでも死んじゃうかもしれないの。
ちょっと前までは、奇跡的に回復するんじゃないかとか、まだやれることがあるんじゃないかとか、あたしも希望持ってたよ。でもさ、もうすぐ死んじゃうなら、何も意味ないんだよ。他の誰か――例えば親とか友達とかシゲちゃんとかヒロくんとか――のために何か出来るかもしれないけど、あたしのためにはならないの。あたしは死んじゃうから。それであたしは絶望したの。
絶望して、それからあたしは何もしないで過ごしたの。ご飯はちゃんと食べるからもちろんトイレにも行くし、眠くなるから寝る。でも他には何もしない。勉強もしないし、本も漫画も読まないし、窓の外も見ない。楽しいことは何もしない。
そうしてるうちにね、あ、これが死ぬってことなんだって気づいたの。
死ぬのって、怖くないんだよ。そりゃね、希望も何もないから楽しくないよ。でも怖くも悲しくも辛くもないの。嫌なことが一つも無いの。それってこの上なく幸せだと思う。人間の一番の幸せは死ぬことなんだって思うのよ。
だからね、あたしのことは心配しなくていいの。もっと悲しそうにしてると思ったでしょ?平気よ、あたしは幸せ過ぎて死にそうなんだから。 あ、言っとくけど来てくれたのは嬉しいんだからね。あたしを心配したり死ぬのを悲しんだりしてくれる人がいるのは嬉しいの。何ならまた来てくれてもいいよ。
それじゃ、これでさよなら。また会えることを祈っててね。
そう話した彼女は明日にでも死にそうな重病人には見えなかったし、本当にその翌日に死んだなんてとても信じられなかった。
彼女に最後に会いに来たのが、医師と彼女の家族を除けば俺と弟だったらしい。彼女はあの数時間後に死んだのだ。
俺は弟と二人で葬式に行った。俺は泣いたが弟は泣かなかった。幼なじみを亡くした俺と、恋人を亡くした弟では心境が全く違うのかもしれない。それとも俺より三年遅く生まれてきたせいか。いずれにせよ弟は人の死が理解できない歳ではないし、理解し受け入れているように見えた。
彼女が病気だと聞かされた時、弟は酷く取り乱した。俺も彼女とは十年以上の付き合いで、家族同然の存在だと思っていたので動揺を隠せなかった。何より彼女を失った弟を想像してどうしようもなく不安を感じた。だから涙一つ流さない弟の姿には拍子抜けし、けれど同時にああそうかと納得した。
葬式の次の日から、弟は家から出なくなった。
一日の大半を自分の部屋で過ごす。漫画やゲームやパソコンに耽っているのかと思いきや、そういったものは全部しまってただ何もしないで過ごすのだという。毎日決まった時間に寝起きして、お袋が呼ぶと黙って食事をしにやって来る。そんな弟を父は気味悪がったがお袋は何も言わなかった。始めからそうだったかのように一日三回弟の部屋のドアを叩いた。俺もそれでいいのだと思った。弟はちゃんと部屋から出てきたし、食べるものは普通に食べたし、体調が優れない様子でもない。いつもの弟がいた。
ある日弟の部屋の前を通るとドアが少し開いていた。開いてるぞ、と声をかけても知ってる、と答えただけだった。入ってもいいんだな、と念を押し、弟の部屋に入ってドアを閉め、弟と並んでベッドに座る。あちこちに散乱していた漫画が本棚に整然とならんでいるせいで、そこはもとの部屋と全く別のものにすら見えた。けれどここは確かに弟の部屋だった。
俺は弟に楽しいかと聞いた。弟は楽しくはないと答えた。俺が幸せかと聞くと、弟は幸せだと答えた。彼女が死んで悲しいかとは聞かなかった。答えは分かっていたからだ。
今度は弟が聞く番だった。大学はどうか、サークルは楽しいか、また試験で失敗したのか、例の気に入らない教授は相変わらず気に入らないのか、バイトで出会った可愛い子とは何か進展があったのか、この前買ってきたゲームは面白いか、何か興味の湧くような番組はあるか、近所の野良猫を最近見かけたか。俺は全ての質問に逐一答えるだけで自分からは質問しなかった。
弟の質問が止まった。ふと時計を確かめると午後四時を少し回ったところだったが、何時からこうしていたのかはわからない。弟が質問を止めなければずっとこうしていたのかもしれなかった。それほど俺は楽しくて、弟は幸せだった。
その夜、お袋と父と俺とで弟の話をした。
「元気じゃないけど、幸せなんだと思う」
俺はそれだけ言った。それでいいことになった。
翌朝、死んだ幼なじみから電話がかかってきた。
俺は昔から朝が弱い。それを知っていたのか、彼女は15歳の誕生日に目覚まし時計をくれた。高校入ったら、ちゃんと早起きしなきゃだめだよ。彼女はそう言ったのだ。だからこの目覚ましは高校に入ってからずっと使っていて、今日も俺を起こすために六時に鳴る筈だった。
午前六時。目覚ましは鳴らない。五年間殆ど毎日使っていたからそろそろ壊れる頃だったのかもしれない。代わりに携帯から聴きなれた女性歌手の歌声が鳴り響いた。表示された名前を読み上げる。ああ、よく知っている。よく知っている響きだ。自分の声が耳に心地良い。
通話ボタンを押すと、死ぬ前と変わらない快活な声が携帯から流れてくる。彼女も質問をするだけで彼女自身のことは話さない。俺は一つだけ聞くことにした。
「弟は元気にしてるか」
シゲちゃんはねー、元気だよ。あたしも元気。ヒロくんは?彼女はそう言った。俺も元気だと答えた。
それでよかった。
死んだらあたしはどうなるのかなって。あたしが知ってる限りじゃ、前世の記憶を持ってる人はいないのね。だから多分、死んだらもう生き返れないよね。生き返っても記憶が無いなら、生き返れないのと同じでしょ。それに、どこに行くかも分かんない。楽しいとこならいいけど、怖いとこだったら嫌だもん。誰もいないとこで一人ぼっちにされたりしたら悲しくてまた死んじゃう。もしかしたら、どこにも行かないのかもしれない。あたしはどこにも無くなっちゃうの。そんなのやだよね。
だから死にたくないって、そう思ってたのね。でもあたしの病気は治らない。明日にでも死んじゃうかもしれないの。
ちょっと前までは、奇跡的に回復するんじゃないかとか、まだやれることがあるんじゃないかとか、あたしも希望持ってたよ。でもさ、もうすぐ死んじゃうなら、何も意味ないんだよ。他の誰か――例えば親とか友達とかシゲちゃんとかヒロくんとか――のために何か出来るかもしれないけど、あたしのためにはならないの。あたしは死んじゃうから。それであたしは絶望したの。
絶望して、それからあたしは何もしないで過ごしたの。ご飯はちゃんと食べるからもちろんトイレにも行くし、眠くなるから寝る。でも他には何もしない。勉強もしないし、本も漫画も読まないし、窓の外も見ない。楽しいことは何もしない。
そうしてるうちにね、あ、これが死ぬってことなんだって気づいたの。
死ぬのって、怖くないんだよ。そりゃね、希望も何もないから楽しくないよ。でも怖くも悲しくも辛くもないの。嫌なことが一つも無いの。それってこの上なく幸せだと思う。人間の一番の幸せは死ぬことなんだって思うのよ。
だからね、あたしのことは心配しなくていいの。もっと悲しそうにしてると思ったでしょ?平気よ、あたしは幸せ過ぎて死にそうなんだから。 あ、言っとくけど来てくれたのは嬉しいんだからね。あたしを心配したり死ぬのを悲しんだりしてくれる人がいるのは嬉しいの。何ならまた来てくれてもいいよ。
それじゃ、これでさよなら。また会えることを祈っててね。
そう話した彼女は明日にでも死にそうな重病人には見えなかったし、本当にその翌日に死んだなんてとても信じられなかった。
彼女に最後に会いに来たのが、医師と彼女の家族を除けば俺と弟だったらしい。彼女はあの数時間後に死んだのだ。
俺は弟と二人で葬式に行った。俺は泣いたが弟は泣かなかった。幼なじみを亡くした俺と、恋人を亡くした弟では心境が全く違うのかもしれない。それとも俺より三年遅く生まれてきたせいか。いずれにせよ弟は人の死が理解できない歳ではないし、理解し受け入れているように見えた。
彼女が病気だと聞かされた時、弟は酷く取り乱した。俺も彼女とは十年以上の付き合いで、家族同然の存在だと思っていたので動揺を隠せなかった。何より彼女を失った弟を想像してどうしようもなく不安を感じた。だから涙一つ流さない弟の姿には拍子抜けし、けれど同時にああそうかと納得した。
葬式の次の日から、弟は家から出なくなった。
一日の大半を自分の部屋で過ごす。漫画やゲームやパソコンに耽っているのかと思いきや、そういったものは全部しまってただ何もしないで過ごすのだという。毎日決まった時間に寝起きして、お袋が呼ぶと黙って食事をしにやって来る。そんな弟を父は気味悪がったがお袋は何も言わなかった。始めからそうだったかのように一日三回弟の部屋のドアを叩いた。俺もそれでいいのだと思った。弟はちゃんと部屋から出てきたし、食べるものは普通に食べたし、体調が優れない様子でもない。いつもの弟がいた。
ある日弟の部屋の前を通るとドアが少し開いていた。開いてるぞ、と声をかけても知ってる、と答えただけだった。入ってもいいんだな、と念を押し、弟の部屋に入ってドアを閉め、弟と並んでベッドに座る。あちこちに散乱していた漫画が本棚に整然とならんでいるせいで、そこはもとの部屋と全く別のものにすら見えた。けれどここは確かに弟の部屋だった。
俺は弟に楽しいかと聞いた。弟は楽しくはないと答えた。俺が幸せかと聞くと、弟は幸せだと答えた。彼女が死んで悲しいかとは聞かなかった。答えは分かっていたからだ。
今度は弟が聞く番だった。大学はどうか、サークルは楽しいか、また試験で失敗したのか、例の気に入らない教授は相変わらず気に入らないのか、バイトで出会った可愛い子とは何か進展があったのか、この前買ってきたゲームは面白いか、何か興味の湧くような番組はあるか、近所の野良猫を最近見かけたか。俺は全ての質問に逐一答えるだけで自分からは質問しなかった。
弟の質問が止まった。ふと時計を確かめると午後四時を少し回ったところだったが、何時からこうしていたのかはわからない。弟が質問を止めなければずっとこうしていたのかもしれなかった。それほど俺は楽しくて、弟は幸せだった。
その夜、お袋と父と俺とで弟の話をした。
「元気じゃないけど、幸せなんだと思う」
俺はそれだけ言った。それでいいことになった。
翌朝、死んだ幼なじみから電話がかかってきた。
俺は昔から朝が弱い。それを知っていたのか、彼女は15歳の誕生日に目覚まし時計をくれた。高校入ったら、ちゃんと早起きしなきゃだめだよ。彼女はそう言ったのだ。だからこの目覚ましは高校に入ってからずっと使っていて、今日も俺を起こすために六時に鳴る筈だった。
午前六時。目覚ましは鳴らない。五年間殆ど毎日使っていたからそろそろ壊れる頃だったのかもしれない。代わりに携帯から聴きなれた女性歌手の歌声が鳴り響いた。表示された名前を読み上げる。ああ、よく知っている。よく知っている響きだ。自分の声が耳に心地良い。
通話ボタンを押すと、死ぬ前と変わらない快活な声が携帯から流れてくる。彼女も質問をするだけで彼女自身のことは話さない。俺は一つだけ聞くことにした。
「弟は元気にしてるか」
シゲちゃんはねー、元気だよ。あたしも元気。ヒロくんは?彼女はそう言った。俺も元気だと答えた。
それでよかった。
